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住宅ローンを賢く借りる法!元銀行員がこっそり教える借りる戦略

教育研究家/元銀行員

岡 幸司

国内・海外の業務経験豊富な元銀行員。大手金融機関で法人及び個人向け融資業務を20年担当。内部監査部門で仕事した経験もあり、企業の内部統制には…

賢く借りれば、豊かになる

もしあなたが、結婚していてお子さんがひとりいて、二人目を期待しているとしたら、そろそろ、家を購入する時期ですね。家を購入するには、自己資金だけではとても足りませんから、銀行に行って住宅ローンを借りなければいけません。

あなたの住宅ローンの借り方次第で、随分と将来が違ってくるのを知っていますか?

私は、元銀行員ですが、約20年銀行で法人及び個人向け融資と資産運用の業務に携わってきました。6年前の53歳の時に自分自身も住宅ローンを銀行から借りて自分の家を建てました。当時は、今より少し金利が高く、都内の物件だったので非常に大きな買い物でしたが、返済に追われるようなことのない余裕ある生活を送っています。将来についても不安はありません。

もし、私が定年までに住宅ローンを返済しよう考えて、返済期間を短く設定したら、今は返済に追われて、日々の生活を楽しんでいる余裕などなかったかもしれません。住宅ローンの返済期間は、20年とか30年の長期わたります。借りているうちに金利水準も変動します。もしかしてあなた自身が転職することもあるでしょう。収入が上がれば問題はありませんが、もし下がったら?

将来のことをよく考えて借りないと自分を苦しめることになりかねません。そんなことがないように、住宅ローンは賢く借りましょう。

もし、賢く住宅ローンを借りれば、もっと豊かにその後の生活を楽しめて、場合によっては、家族に資産を残すことができるのです。これからその戦略をお教えしましょう!

目次

  1. 1.住宅ローンを賢く借りる
  2. 2.住宅ローンをいくら借りるか
  3. 3.自己資金はいくら必要か
  4. 4.住宅ローンは何年で返済するか
  5. 5.団体信用生命保険(団信)
  6. 6.どう繰上げ返済するか
  7. 7.固定金利か、変動金利か
  8. 8.銀行を選ぶとすれば
  9. 9.まとめ

1.住宅ローンを賢く借りる

そもそも住宅ローンとはよく耳にするけれど、具体的に何なのかわからない人も多いと思います。まずは、住宅ローンとはどういうものなのか?そして、賢く借りるためにはどうすればいいのか?などを解説していきます。

住宅ローンはどういう借り入れか

まず、知っていてもらいたいことは、住宅ローンは定型商品だということです。定型商品とは、あらかじめ基準が設けられていて、その基準に適合する人に融資をする商品です。住宅ローンの申し込みを審査するにあたって、銀行内にはチェックリストがあり基準を満たしているかどうかを判定します。チェックリストの項目をチェックしてすべての項目が〇なら審査合格となります。

チェックリストの項目は、「自己資金が3割以上あるか?」、「返済比率が年収の35%以内か?」、「完済時の年齢は65歳未満か?」などの項目です。審査に合格するためには、こういった項目全部をクリヤーする必要があります。

ただし、チェックリストは銀行の判断基準を示しているだけなので、ひとつやふたつチェックリストの項目が不適合でも銀行が融資しないわけではありません。その時の銀行の営業方針と融資判断の問題なので、融資を増やしたいときは、少し無理をしても案件を通そうとすることもあります。ですから、借り入れ条件について銀行と交渉することができるということをあらかじめ認識しておいてください。

金利は今どれくらいか

住宅金融支援機構のフラット35は、2018年10月時点で、固定金利は年1.410%~2.070%(35年、融資率9割以下)です。フラット35以外の民間金融機関の住宅ローンも空前の低水準となっています。代表的なネット銀行のひとつである住信SBIネット銀行を見てみると2018年10月の金利は変動金利で年0.447%~となっています。また、住宅金融支援機構による民間金融機関の住宅ローン金利の推移は下表の通りとなっています。

2018年7月、日銀は一定の金利上昇を容認する方針を示しました。今後、金利が緩やかに上昇していく可能性もあります。しかし、長期的な金利の推移をみれば、現状はまだ低位に推移しており、新規・借換えのいずれの場合でも、今は住宅ローンを借りる好機だと思います。

賢く借りる戦略

まず、私の考える住宅ローンを賢く借りる戦略の基本的な考え方を下図に簡単に整理してみましたので、ご覧ください。

金利状況に応じて、住宅ローンをどのような方針で借りて、借入期間中はどのように返済をしていくのか戦略・方針を整理したものです。「金利が高い」、「金利が安い」は、あまり厳密なものではありません。金利が3%以上は「高金利」、それ未満は「低金利」などと定義しているわけではありません。大雑把な考え方の整理をしているだけなので、そのように考えてください。

〇金利が高い場合

項目戦略・方針
借入金利できるだけ借入額を少なくする。
自己資金できるだけ自己資金を投入する。
返済期間できるだけ返済期間を長くする。ただし、余裕資金が溜ったら繰上げ返済し残高圧縮を図る。

金利が高い時は、当然、支払利息が多くなるわけですから、極力借入額を圧縮するのは当然です。そのためには、自己資金を投入して銀行からの借入額を少なくします。

〇金利が安い場合

項目戦略・方針
借入金利できるだけ借入額を多くする。
自己資金できるだけ自己資金を留保する。
返済期間できるだけ返済期間を長くする。ただし、繰上げ返済はしない。余裕資金を低リスク商品で運用も可能。

一方、金利が低い時は、極力、自己資金を投入しないで銀行からできるだけ多く住宅ローンを借りる方がいいでしょう。手元に留保した自己資金は、運用に回せば借入金利以上の利回りも期待できます。変動金利で借りている場合は、金利が上昇してきた時に繰り上げ返済します。金利の支払額の上昇を抑えられます。

【基本的な考え方】
金利状況に応じて、住宅ローンをどのように借りて、借入期間中どのように返済していくか戦略がある。

それでは、戦略のポイントごとに説明してみましょう。

2.住宅ローンをいくら借りるか

住宅ローンを「いくら借りられるか?」ということと「いくら借りるか?」の違いはわかりますか?これから、「いくらかりられるか?」=あなたの借入限度額です。これはあなたの収入により決まります。収入がそのままでも住宅ローンの借入限度額を引き上げることができれば、あなたが実際に借りることのできる金額を多くすることが出来ます。

いくら借りられるか

住宅ローンを「いくら借りるか?」は、「いくら借りられるか?」とは違います。「いくら借りるか?」=「あなたの戦略・方針」です。「いくら借りられるか?」=「あなたの返済能力/借入限度額」です。

まず、住宅ローンを「いくら借りられるか?」について考えてみましょう。

結論から言えば、住宅ローンを「いくら借りられるか?」は、あなたの収入で決まります。実際にあなたが、毎月いくらまで返済できるのか、ボーナス時にはいくら返済できるのか、年間ではいくら返済できるのかで、あなたが住宅ローンを借ることのできる上限が決まってきます。

あなたの住宅ローンの返済能力を金融機関は、どのように判断しているか知っていますか?

金融機関は、ひとつの判断基準として、「返済比率」を住宅ローンの審査で利用しています。返済比率というのは、住宅ローンの年間返済額が年収の何%を占めるかを示す指標です。

たとえば、毎月の返済額が10万円、ボーナス月の返済が50万円なら、年間の返済額は200万円です。年収800万円の人だと返済比率は25%です。年収600万円なら33%になります。

この返済比率の上限を金融機関が何%としているか公表はされていませんが、住宅金融支援機構のフラット35では、

年収400万円未満 30%以下
年収400万円以上 35%以下

となっています。民間金融機関でも同様の指標がチェックリストに使われています。

住宅ローンの返済能力を引き上げる方法

さて、住宅ローンをいくら借りるかは、借入限度額の範囲内で決定しなければなりません。金利が高い時は、自己資金を投入して、極力、借入額を少なくするので、借入上限額はあまり問題になりません。ところが、金利が安いときは、極力、マイホームの購入額全額を借りようとすると、住宅ローンの借入の上限を超えてしまうことがあります。

その場合、どうしたらよいか?もちろん、あなたの収入が増えれば、住宅ローンの借入の上限を引き上げることができます。しかし、それはすぐにできる話ではありません。それではどうするか?実は、住宅ローンの借入限度額を引き上げる方法がもうひとつあるのです。

さきほどの返済比率は、住宅ローンの年間返済額が年収の何%になっているかの指標です。この返済比率で住宅ローンの借入限度額が決まります。年収はすぐに増やすことはできません。しかし、年間返済額を減らすことはできます。年間返済額を減らすには、住宅ローンの返済期間を延ばせばいいのです。返済期間をできるだけ長く設定できれば、その分だけあなたが借りることのできる限度を引き上げることができます。

下のシミュレーションを見てみましょう。年収400万円の人が3,000万円の住宅ローンを借りようとした場合の返済比率の比較をしています。金利はフラット35の対応する借入期間の金利を使用しています。

前提条件
借入額3,000万円
返済方法元利均等返済※(ボーナス時増額返済なし) ※毎月の返済額(元金+利息)が一定となる返済方法
年収400万円

20年返済では、毎年の返済額が1,709,160円となり年収に対する返済比率が42.7%になってしまいます。基準からすると3,000万円の住宅ローンは過大となり借り入れることができません。ところが、返済期間を30年とすると、毎年の返済額は、1,226,940円となり、年収に対する返済比率は、30.7%まで下がり、住宅ローンを借りることができます。

返 済 期 間20年30年
金利(固定)1.33%1.41%
毎月返済額142,430円102,245円
年間返済額1,709,160円1,226,940円
返 済 比 率42.7%30.7%

このことは、後から説明するポイント「金利が高い、安いに関係なく、返済期間は、極力、長くする」理由の一つともなります。

【ポイント①】

金利が高い時は、自己資金を投入して、極力、住宅ローンの借入額を少なくする。
逆に、金利が安い時は、極力、マイホーム購入額全額を住宅ローンで借りて、自己資金を手元に留保する。

3.自己資金はいくら必要か

自己資金ということばをよく耳にすると思います。自己資金とは、住宅ローン借入に頼らないで自分で用意するお金のことを言います。ここでは、自己資金をいくら用意すればいいのか?ということと、どうしてそれが必要なのか?ということを説明します。

自己資金とは何か

住宅ローンを借りるときに、登記、家具などの購入、引越しなどの費用が掛かります。これらの諸費用と住宅の購入に直接充当することができる頭金が必要となります。

金融機関によっては、頭金のことを自己資金ということがありますので、ここでは諸費用と頭金の合計が自己資金と整理しておきましょう。通常、諸費用は融資の対象となりませんので、諸費用も頭金もご自分で用意しておく必要があります。

自己資金(頭金)が必要とされる理由

何らかの事情でマイホームを売却しなければいけなくなった場合、通常、物件の売却価格は購入価格を下回ります。新築の購入物件は中古物件として売却することになります。中古で買った物件は、売却時にはさらに経過年数の長い中古物件となります。いずれの場合も、通常、売却価格は下落します。その結果、売却価格が残債を大きく上回り、借金だけが残ってしまいます。担保となっているマイホームを売却しても借金を返済しきれないことを担保割れといいます。

頭金をどのくらい入れておけば担保割れしないかということは物件によりますが、頭金を1割入れておくだけでも、マイホーム売却後に多額の借金が残るというリスクは減らすことができます。通常は、住宅ローンの借入額の2~3割を頭金とすることが、安全で確実に返済するための目安となっています。

全額借入でも自己資金は必要か

結論から言えば、自己資金は必要です。

なぜならば、仮に、何らかの事情でマイホーム売却しなければならなかったとしても、自己資金を留保していれば、物件の売却価格が下回った分をそれでカバーできるからです。

マイホームの購入に一部自己資金を投入する場合は、自己資金を投入することで物件の価格下落リスクをカバーしています。全額を借り入れる場合は、自己資金を手元にしっかり確保することで物件の価格下落リスクに備えることになるのです。

最近、私の会社は持っている社宅のひとつを売却しました。その社宅を購入された方は、三井住友銀行から、物件価格の1,300万円にリフォーム費用800万円を上乗せして借りていらっしゃいました。諸経費はご自分でご負担したうえで、自己資金は使わずに物件を購入し、さらにリフォーム費用も全額を借りていらっしゃいました。

もし、その方が自己資金を全く用意していないであればリスクは高く、お勧めはできるものではありません。

ここで私が強調したいのは、全額を金融機関から融資してもらっても、自己資金をご自分で確保していれば、リスクが軽減されるということです。購入物件の価格が下落するリスクばかりでなく、手元にお金が残っていれば、ご自身のライププランに変更が生じた場合のリスクにも対処できます。手元に留保したキャッシュを使って対処すればいいからです。

【ポイント②】

できるだけ、必要な資金の2~3割程度を用意しておく。マイホームの取得額全額を住宅ローン借りる場合でも自己資金を準備して手元に留保しましょう。

4.住宅ローンは何年で返済するか

さて、年収と借入限度額との関係、自己資金を準備する意味を考えたところで、住宅ローン返済期間のことを考えてみましょう。住宅ローンの返済期間を何年で設定するかについては、いろいろなことが言われていますが、惑わされないようにしましょう。なぜなのか?これから説明します。

定年までに完済?

一般的には、住宅ローンの返済を定年までに終わらせることが適切だと言われています。つまり収入のある期間で完済させるのがよいということです。

その理由は、給与収入がなくなり、年金生活になったとき、住宅ローンの返済が残っている場合は、返済できなくなるリスクが大きいからです。今の社会保険制度では、将来年金がきちんともらえるかどうかわからないという不安もあります。このため、一般的には定年までに住宅ローンを完済することが適切だと考えられているのです。

返済年数は短いほどいいか

また、返済期間も短ければ、短いほどいいと一般的に言われます。その理由は、住宅ローンの返済年数が短ければ短いほど、支払う金利も少なくて済みます。一方、返済期間を短く設定しすぎると、毎月の返済額が大きすぎて払えないことが起きます。あなたの収入により返済できる範囲内で、できる限り短く設定することが望ましいと一般的には言われています。

しかし、私は、返済期間はできるかぎり長くしておくことをお勧めします。

もう一度、返済比率の比較で使った事例を見てみましょう。20年返済のローンと30年返済のローンを比較しています。金利は借入期間に対応するフラット35の金利で計算しています。

前提条件
借入額3,000万円
返済方法元利均等返済※(ボーナス時増額返済なし) ※毎月の返済額(元金+利息)が一定となる返済方法

20年返済と30年返済では、30年返済の方が、金利が0.08%高くなり、総返済額では、2,625,075円多くなります。しかし、毎月返済額では40,185円、年間返済額で482,220円返済額が軽減されます。20年間では9,644,400円(=482,220円×20年)のお金が手元に残ります。

返 済 期 間20年30年差額
金利(固定)1.33%1.41%0.08%
毎月返済額142,430円102,245円△40,185円
年間返済額1,709,160円1,226,940円△482,220円
総返済額34,183,058円36,808,133円2,625,075円

もし、返済期間を長くして、手元に資金に余裕を持てれば、何よりまず、生活にゆとりができます。しかしそれ以上に、今後ご自身のライフプラン上のリスクに適切に対処できることになります。

終身雇用が既に崩れたこれからの時代、最初に就職した会社で一生勤め上げるということは少なくなるでしょう。あなたも転職を何回か経験するかも知れません。転職して収入が良くなればいいですが、そうでなければ住宅ローンの返済ができなくなるリスクを抱えることになります。逆に、転職しようとしても、金銭的な余裕がないと、不本意ながら、今の会社に留まらざるをえないことになります。

一方、自己資金を留保していれば、返したいときにいつでも繰上げ返済ができます。できるだけ長く返済期間をとっておけば、資金繰りが楽になり手元の現金に余裕ができます。場合によっては手元資金を運用することもできます。上手に運用すれば、借入金利以上に運用することも可能です。

また、既にご説明したように、返済期間を長くとれば、それだけあなたの返済能力を高めることができます。より多くの金額を借りる余地ができるとともに、返済に猶予を持たせることが出来ます。

【ポイント③】

金利が高い、安いにかかわらず、住宅ローンの返済期間をできるだけ長くする。

5.団体信用生命保険(団信)

住宅ローンを借りたときには、団体信用生命保険(団信)という生命保険に加入することができるのを知っていますか?住宅ローンを借りるときに、その分金利が上がったりするので、加入しない人も多いのではないかと思います。結構、重要なことですので、なぜ団信に加入する必要があるのか?私自身の事例で説明します。

私の場合、53歳の時に住宅ローンを借りました。海外勤務が長かったので、住宅の取得時期が遅くなりました。銀行にはできるだけ長い返済期間をお願いして20年の返済期間としてもらいました。したがって、73歳の時に完済する予定です。通常の場合、サラリーマンであれば定年を超える返済期間は認められませんが、了解してもらいました。

現在ローン残高は3,000万円ほどありますが、1,500万円ほどお金を返済資金として積み上がっています。金利は0.775%で年末残高の1%の税額控除を受けているため、実質的な金利負担は、当初10年間はありません。あと4年で10年間の減税期間を過ぎますが、それが過ぎても繰上げ返済するつもりはありません。なぜか?団体信用生命保険に加入しているからです。

なぜ、団体信用生命保険(団信)に加入する必要があるのか?

団体信用生命保険とは、ローンの利用者を被保険者とする保険契約です。住宅ローンを借りている利用者が保険期間中に死亡または高度障害などになった場合に、生命保険会社から保険金が銀行に支払われ、その保険金でローンが返済されます。

私がもし事故で死んだら、団信で住宅ローンが返済され、私がプールしておいた1,500万円は家族に残されます。住宅ローンの残債が完済されたうえで、家族にまとまった現金を残すことができれば安心です。家族に当面の生活する現金がなければ、残されたマイホームを売るしかありません。

現在は、団信の種類や商品性も向上しています。ガンなどの特定の疾病になった時にも保障される商品もあります。ご自身のライフプランに合った商品を選んで、団信に加入しましょう。

【ポイント④】

団体信用生命保険(団信)には、必ず加入する。

6.どう繰上げ返済するか

既に少し触れしまいましたが、次は繰上げ返済についてお話します。繰上げ返済を頻繁にして住宅ローンを早く返済しようとする人をよく見かけます。果たして、それは正しいのか?考えてみます。

繰上げ返済とは

住宅ローンの繰上げ返済とは、返済の負担を軽減する方法の一つで、毎月あるいはボーナス時の返済額とは別に、住宅ローンの全部または一部を前倒しして返済することです。

返済額の観点からは、以下の2つがあります。

  • 全部繰上げ返済する(完済)
  • 一部を繰上げ返済する(「一繰」といいます)

予定より早く元金が返済されることで、返済予定の元金を少なくし、金利の支払いを軽減できます。

また、住宅ローンの繰上げ返済には、以下の2つがあります。

  • 返済期間を短縮する「期間短縮型」
  • 返済額を軽減する「返済額軽減型」

繰上げ返済のメリットとデメリット

以下の3つのメリットがあります。

  • 総返済額を機動的に減すことができる
  • 住宅ローンを予定よりも早期に完済することができる
  • 月々の住宅ローンの返済額を減らすことができる

住宅ローンの借入金額が大きいほど、また、借入期間が長いほど繰り上げ返済の効果は大きくなります。

一方、デメリットとしては、以下のことがあげられます。

  • 当然のことですが、手元に現金が残らない
  • 住宅ローン控除が受けられなくなる場合がある

時折、積極的に繰り上げ返済を進めていく方がいらっしゃいます。そのこと自体は結構なことですが、やり過ぎると手元資金のやり繰りに苦慮しかねません。メリットとデメリットをよく考えて繰り上げ返済をしてください。

金利が安いときは繰上げ返済しない

金利の高いときは、返済が金利に食われてなかなか元本の返済に回りません。余剰資金がある場合は、一部繰上げ返済をこまめに行いましょう。ただし、期間短縮型ではなく、返済額軽減型で一部繰り上げ返済をしましょう。返済額が軽減された分は留保して、金額がまとまったらさらに一部繰上げ返済をします。こうすることで元本の内入れがすすみ、総返済額を少なくすることができます。

一方、今のように金利が低い時は、繰上げ返済は極力せず、手元にお金を留保しましょう。手元に留保したお金は、あなたのライフプランが変わった時に使うこともできますし、運用に回すこともできます。また、先ほど説明したように、ご自身に万が一のことがあった場合には、団信で残債が返済されたうえで、留保していたお金を家族に残すことができます。

ただし、運用に回す場合には、返済に回すことを想定している資金ですので、元本割れリスクの少ないものに限定してください。あるいは、全額ではなく一部を運用するなどリスクを限定するようにしてください。

【ポイント⑤】

金利の高いときは、繰上げ返済してできるだけ早く返済する。逆に、金利が安いときは、繰上げ返済をしないで、手元にお金をプールします。

7.固定金利か、変動金利か

次は、固定金利で借りるか、変動金利で借りるかにつてお話しします。これは結構難しい選択です。住宅ローンは20年とか、30年とか長期の借入です。その間市中の金利も変動します。それだけ長い期間の金利の変動を見通すのは至難なことです。住宅ローンの金利タイプの特性を理解した選択が必要になります。

金利のタイプと特徴

そもそも住宅ローンの金利には大きく3つのタイプがあります。「全期間固定型」と「変動型」、そして「固定期間選択型」です。呼び方は、銀行により多少違いがあります。

「全期間固定型」は、当初設定された金利がローンを完済するまで固定されます。

市中金利の動向には全く影響を受けません。総返済額が確定するため、将来のライフプランを設計しやすいメリットがあります。変動型や固定期間選択型と比べて金利は一番高くなりますが、金利上昇局面では不安はありません。

「変動型」は市中の金利変動を反映させて、金利を半年ごとに見直します。

金利が見直された場合、返済額の元本と利息の割合が変更されます。月々や賞与時の返済額は5年間変わりません。しかし、急激な金利の上昇があると返済額のほとんどが利息の返済となり、元金の返済が進まないリスクがあります。3つのタイプのなかで金利が一番低いのがこのタイプです。

「固定期間選択型」は、上記2つの中間のタイプです。

当初に固定金利期間を定め、その期間が終了するタイミングで、以降の期間を同じ固定期間選択型にするか、変動型にするかを選択できるものです。金利水準は全期間固定型と変動型の中間です。固定期間は3年、5年、10年があり、固定期間が長くなるほど金利は高くなります。名称に「固定」とついていますが、全借入期間の金利が固定されているわけではありませんので、金利上昇リスクはあります。

金利タイプ特徴
全期間固定型当初設定された金利がローンを完済するまで固定
固定期間選択型当初に固定金利期間を定め、その期間が終了するタイミングで、以降の期間を同じ固定期間選択型にするか、変動型にするかを選択
変動型市中の金利変動を反映させて、金利を半年ごとに見直す

3つのタイプをどう選択するか

金利上昇局面では、全期間固定型を検討するが原則だと思います。たとえば、住宅支援機構のフラット35(21年以上35年以下)で、2018年10月現在、最も多い金利は年1.410%です。ご自分の収入を考えて、現在の水準で、十分に金利負担ができる場合は全期間固定型を検討しましょう。金利の上昇を心配する必要がなくなります。

また、借入れ後何年かの間、お子様の教育費など負担が見込まれる場合は、固定期間選択型を選択することも考えましょう。たとえば、当初10年固定金利を選んでおけば、お子さんが私立の高校・大学などに就学して教育費がかかる間は、金利が固定されているので金利の上昇の不安もなく収支計画が立てやすいメリットがあります。

「変動型」は、借入金利が最も低くいのですが、金利が上昇してきた場合は、借入金利も見直されて高くなってしまいます。一番メリットもあるが、リスクも高いタイプと言えるでしょう。金利が下降している局面か、当面は金利が上昇しない局面で検討するのがよいでしょう。

しかし、現在、経済が成熟した先進国では低金利の時代になっています。金利が上昇する可能性があるとは言え、高度成長期のように金利が5%、6%まで大幅に上昇することはあまり考えられません。変動金利を検討するのも選択の一つです。金利が上昇した場合でも、手元資金で繰り上げ返済を行い、金利の支払い額を極力圧縮するなどの対応を行うことをあらかじめ考えておけばリスクは軽減されます。

金利タイプ選択方針
全期間固定型金利上昇局面か、金利上昇が見込まれる局面
固定金利選択型ライフプランを考えて検討する
変 動 型金利下降局面か、当面金利が上昇しない局面

私の場合は、6年前に変動金利で住宅ローンを借りました。その頃は、当面の間、金利が上昇するような見通しはありませんでした。自分のライフプランを考えても、金利が上昇した場合に対処できましたので、変動金利(変動型)で借りました。

私が住宅ローンを借りたのは53歳の時だったので、12年経つと今の会社の定年を迎えます。今年、6年が経過して定年まであと6年です。当初の目論見通り金利は上昇しませんでした。今後は金利が上昇してくる可能性はあります。私の場合は、借入時に住宅購入に投入せずに留保したお金と定年までに少しづつ留保される現金に、定年時に退職金として受け取るお金の合計額が定年時の住宅ローンの残高と同じになるようにプランを立てています。しようと思えば、定年退職時に住宅ローンを完済できます。

金利が急激に上がらなければ、定年退職後は預金を少しずつ取り崩しながら、73歳の返済期限まで住宅ローンをゆっくりと返済します。逆に急激に金利が上昇するようであれば、一部繰上げ返済を多用して早期にローン残高の圧縮を図り、支払利息の増加を極力抑えるようにする方針です。リスクに対する備えはできています。

金利が上昇した場合のプラニングができるようであれば、変動金利で住宅ローンを借りることも検討に値します。現在、住宅ローンを変動金利で借りる方は、全体の56.5%に達しています(2017年住宅金融支援機構調べ)。

結局、変動金利が得か、固定金利が得かは、返済が終わってみなければわかりません。金利で得しようなどとはあまり考えないようにしましょう!

【ポイント⑥】

金利のタイプの選択は、あなたの今後のライフプランをよく考えて、それに合った選択をする。

8.銀行を選ぶとすれば

さて、最後には、どの銀行から借りたらいいのかということを考えてみましょう。それぞれの銀行に特色があり、用意している住宅ローンの商品にも違った商品性があります。複数の銀行を選んで、自分に合った銀行を選ぶ必要があります。

大手銀行(従来型銀行)

実は、日銀の超低金利政策のおかげで、銀行は金利で急速に稼げなくなっています。以前は、収益性が高いと言われていた住宅ローンも、ネット銀行などの参入もあり、金利競争が激しくなっています。このため、以前ほど収益性が見込めず、現在、大手銀行は住宅ローンをあまり積極的には取り扱っていません。

住宅ローンの借入金利が変動金利で1%を下回っているなかで、銀行としては住宅ローン処理にかかる事務コストや人件費を吸収したうえで利益を出していかなければなりません。このため、大手銀行では、ローンの受付自体をローンセンター等に集約したり、極力ネット受付できる体制にしたりして省力化を進めています。三菱UFJ銀行は、KDDIと共同出資して「じぶん銀行」というインターネット銀行を2006年6月より運営しています。また、パソコン・携帯電話およびスマートフォン・タブレットから利用できるネット専用住宅ローンも自行で運営しています。

ネット銀行

ネット銀行といわれる銀行は、ネット受付を主体としています。従来型の銀行に比べ、店舗や自前のATMが少なく、預金通帳も発行しません。人件費や店舗運営コストがかからないため、預金金利が高く、手数料は安いところが多いです。住宅ローンも大手銀行の住宅ローンと遜色ない商品を提供できます。

こうした銀行では、上記のように物理的な店舗を極力持たず、合理化や省力化したローンの受付処理体制を構築しています。ローンの申込のため店舗への訪問の必要ありません。訪問するのは契約書を取り交わす時ぐらいです。大手銀行より低レートで住宅ローンを提供できますので、金利面ではネット銀行の方が優位にあります。

実際に複数行を検討する

一方、お勤め先やご自分の取引銀行の営業担当者を通じて交渉した方が有利な条件を引き出せることもあります。お勤め先やご自分の取引銀行などにも相談してみてください。ネット銀行とあわせて複数行と相談して、より自分に合った条件を出してくれるところに決めましょう。ただし、ネット銀行は基本的にネット受付なので、相談業務に十分応じられるスタッフを抱えていません。相談する場合は、大手をはじめとする従来型の銀行の方がいいかも知れません。

また、銀行により住宅ローンの商品性にも違いがあります。金利ばかりでなくご自身の今後のライフプランに一番合った条件を提供してくれる銀行を総合的に検討して、ベストの銀行を選ぶ方がよいでしょう。

私の場合は、ネット銀行1行と大手信託銀行と自分が勤めていたメガバンクの3行の住宅ローンを検討対象としました。ネット銀行は金利が一番安かったのですが、条件交渉は受けてもらえませんでした。結局、相談に親身に応じてくれて、金利がそこそこで、借り入れ条件について、こちらの要望に対応してくれた大手信託銀行から借りることにしました。残念ながら、私の勤めていた銀行は金利がちょっと高すぎました。

今は、住宅ローンの比較をしているサイトがあります。すべての銀行を調べて検討することはできませんので、そういったサイトを活用して数行に絞り込んだなかから検討してくのが効率的でしょう。それに既に取引のあるご自分の銀行や会社の取引銀行を加えて検討していくとよいでしょう。

実際にサイトで推奨されている住宅ローンを実際に比較検討してみましょう。どの住宅ローンをあなたは選びますか?この例では、ネット銀行と言われる銀行2行と従来型の銀行が1行推奨されています。


総支払額を予め確定したい方は、固定金利で住宅ローンを選びましょう。この例では、楽天銀行が非常に魅力的な金利を提示しています。ただし、注意が必要なのは、団体信用生命保険です。表で示されている金利には、団体生命保険(団信)の保険料は含まれていません。このローンの場合、団信に加入する義務はありませんが、団信には是非加入しておきましょう。あなたの不測の事態に備えるためです。団信に加入する場合、通常0.2%程度金利が上乗せになってきます。

楽天銀行の提供する住宅ローンはフラット35です。フラット35は、民間金融機関が、融資した住宅ローンを住宅金融支援機構に譲渡し、そのローンを裏付けとして資金調達を行うという手法を用いた住宅ローンです。主な商品概要(お申込要件など)は機構が全国共通で定めていますが、ローンを提供するのは、あくまで民間金融機関なので、ローン金利や取扱手数料、お申込時の提出書類等は金融機関によって異なります。この例では、楽天銀行の20年固定金利は団信を加味した後で、1.080%となります。他の2行の固定金利選択型(20年)と比較しても安い金利になっています。

お子さんの教育費が今後嵩むような事情のある方は、固定期間選択型を検討しましょう。金利だけをみると、当初10年間固定金利とする場合は、低い金利を提示しているじぶん銀行を検討対象とするのがいいでしょう。当初20年固定金利とする場合は、一番低い金利を提示しているりそな銀行を検討してみましょう。ただし、りそな銀行は、取扱手数料がじぶん銀行と比べて32,500円だけ高くなっています。

とにかく最初は安い金利で借りたいという方は変動金利型を検討してください。じぶん銀行もりそな銀行も魅力的な金利を提示しています。わずかにりそな銀行が安いです。

注意したいのは団信です。じぶん銀行もりそな銀行も団信料はゼロです。しかし、補償範囲に違いがあります。じぶん銀行は、本人死亡の場合のほか、がんになった場合には、住宅ローン残高の半分が保険により返済されます。一方、りそな銀行の団信は、ご本人が死亡した場合だけでなく、がん・心疾患・脳卒中の3大疾病にかかった場合や所定の要介護状態になった場合などにも住宅ローンが全額完済されます。

このほかに、マイホームの購入費のいくらまで貸してもらえるのか?返済期間を何年まで認めてくれるのか?などを加味して総合的に判断して銀行を選択するのがいいでしょう。

ただし、これらの事項は、実際に申し込んでみないとわかりません。また、住宅ローンの条件は毎月変わっていますので注意してください。なお、りそな銀行は従来型の銀行ですので、店舗で十分な相談にも応じてもらえるでしょう。

わずかな金利差だけで銀行を選ぶようなことは避けましょう!

【ポイント⑦】

銀行を選ぶ時は、複数の銀行に申し込みをしたうえで、提示された条件を総合的に比較検討して、自分のライフプランに合った条件を提供してくれる銀行を選択する

9.まとめ

ここでは、住宅ローンを借りるときの戦略的なポイントを7つの観点から説明してきました。7つのポイントを参考にして、それぞれの銀行の住宅ローンの商品性の違いや提示条件などをよくよく検討して、ご自身のライフプランに最も合うよう住宅ローンを借りましょう!

あなたが、将来の生活に余裕を持ち、人生を楽しめるよう祈念しています。

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教育研究家/元銀行員

岡 幸司

国内・海外の業務経験豊富な元銀行員。大手金融機関で法人及び個人向け融資業務を20年担当。内部監査部門で仕事した経験もあり、企業の内部統制には詳しい。現在、一般企業で総務・人事、社員教育などを担当。その業務経験から実践的な社員教育を研究するとともに、日常業務の問題解決法など、実践的な業務知識・ノウハウを一般に伝える活動をしている。6年前に住宅ローンを借り「戦略的な賢い借り方」を実践中。

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