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【現役国語講師が教える】文章の読み方(小説・随筆文編)

国語科講師

桜沢うみ

高校は国際教養科に進学し、英語や外国文化に多く触れる。しかしクラスメイトたちの国語に対する意識の低さを目の当たりにし、改めて日本語や国語の…

「日本人だから、国語の問題なんて勉強しなくてもできるでしょ」なんて声を、私は現場でよく聞きます。しかし、それは大きな誤解。深く読み解くテクニックがないと、試験問題は解けないのです。特にみなさんが甘く見ている「小説・随筆文」の読み方をお教えします!

目次

  1. 小説にも「読み方」はある!
  2. 大切なのは「心情」。どんな形で描かれる?
  3. 小説にも、テーマがある。
  4. 「随筆」って何?「論説文」との違いは?
  5. 随筆の正しい読み説き方を知ろう!
  6. 「文学的文章」こそ、深い読解力が必要。

国語の試験で難しいのは、論説文や説明文の論理的なものだけ。小説の問題なんてサービス問題!って思っている方、もしかしたらたくさんいらっしゃるのかもしれません。
結論から言うと、「全然そんなこと、ありません!」普段読みなれている文体の文章だからこそ、油断してはいけないんです。十分な注意が必要です。だって、普段読書をするとき、問題なんて解かないですよね。小説の問題を解くときに、いつもの読み方では、しっかり理解できていない部分も多いんです。書いてあることをそのままなぞっていくだけではいろいろなことを見落としてしまいますよ。

私が教育に携わる中で感じるのは、「そもそも、文章の正しい読み方を理解していない人が多い!」ということ。
そのため、今回は文章の「読み方」に焦点を当ててご紹介します。
試験の得点を考える前に、まずは読むテクニックをおさえることが大切。ぜひ自分の日々の読解方法を見直すきっかけにしてくださいね。

小説にも「読み方」はある!

まず最初に、「読書」に関するデータをご紹介します。

読書に関する調査(2016年版)


https://insight.rakuten.co.jp/report/20160929/

読書を習慣にしている人は減っているという統計も出ていますが、読むジャンルとしていちばん多く挙げられるのはやはり「小説」ですね。子供のころから「本を読む」ときに図書館で借りてくるのは、小説ジャンルのものだった人が多いはずです。幼いころから身近に親しんでいるジャンルなのですね。
それなのに、国語のテストになるとわからなくなってしまう。そう不思議に思っていらっしゃる方も多いでしょう。それは、みなさんが「テスト用の読み方をしていない」からです!
登場人物をなぞり、ただなんとなく話の流れを追っていくだけ。それは趣味の読書の範囲を出ない読み方です。

小説とは…作者が登場人物・シチュエーション・ストーリーを作り、それを自分で動かしていくもの。

小説は先ほどのデータでもご紹介したとおり、おそらく、みなさんにとっていちばん身近な「本」のジャンル。最近はスマートフォンの登場により少し減ったような気がしますが、電車に乗ると小説の文庫本を読んでいる人も多くいました。現在は電子書籍で小説を読んでいる方も多くなってきているようですね。

小説は基本的に想像で作られた「フィクション」。実際に起きた出来事を下敷きにしたノンフィクションの小説ももちろんありますが、みなさんが読むものは作者の頭の中で構築されたフィクションの世界であることが多いのではないでしょうか。学校生活を舞台にしたものであったり、ファンタジーがあったり…いろいろなシチュエーションが描かれますが、みなさんはどんなふうに読んでいますか?

みなさんが読んでいる世界を作っているのは「作者」というひとりの人間。その人はまた、そのストーリーを通して何かを伝えたいと思っているのです。たとえば友情の大切さだったり、努力することの尊さだったり…
そのストーリーで作者が私たちに伝えたいテーマはなんなのか?それを正しくつかむことができていますか?それをつかむための読み方、おさえるべき大切なこと、確認していきましょう。

大切なのは「心情」。どんな形で描かれる?

小説文を読み解くのに大切なこと。何よりもまず「心情理解」です。
心情とはわかりやすく言うと気持ちのこと。「今、この人はどういう気持ちなの?」そう問われるということです。

心情は、いろいろな形で表現されます。「うれしい」「悲しい」「さみしい」「幸せ」…人間は様々な感情を持っていますが、それがいつも直接的な言葉で表されるとは限りません。


筆者は、いろいろなものに登場人物の気持ちを託します。風景や空模様、そして、描かれている人物の表情や動作などを細かく拾いながら読むことが、小説を深く読み取るポイントです。

読解例その1

思えばずいぶん遠いところまで来てしまった。周りに人影は見えず、ひとりぼっちだ。彼はふいに空を見上げた。すると、空は重い雲に覆われ、今にも雨が降り出しそうであった。

たとえば上記の例だとどうでしょう。「ずいぶん遠い」ところまでやってきてしまった彼が「ひとりぼっち」で空を見上げると、重い雲に覆われた空から雨が降り出しそうだった。この情景を、みなさんはどのように受け止めるでしょうか。
その場面の空模様、天気、空気…そういうものをしっかり想像し、登場人物の気持ちと重ねるのです。上記の場面において「彼」は、ひとりぼっちで遠いところまで来てしまった。そんな彼は今どんな気持ちだと思いますか?きっと「不安」や「怖さ」を抱えていることでしょう。そんな気持ちを読み取ることができますね。

国語のテストにおいては「心情理解」に関するものは必ず出ます。
「嬉しい」や「悲しい」など、直接的な気持ちが書いてある部分に関しては、先生たちは尋ねません!

本文中の言葉をどれだけしっかりと拾い、その状況や気持ちを想像することができるか?
先生たちはそこを見ています。

読解例その2

わたしが外に出ると、太陽の光が輝いていた。今日から新しい生活が始まる。庭の花壇に昨日まではつぼみだった花が咲いているのを見つけて、思わずほほえみがこぼれた。

外に出た「わたし」が見たものは「太陽の光」。先程例に挙げたのは曇り空でしたが、ここでは晴れた空がのぞいていることがわかります。そして今から始まる新生活への希望をその「太陽の光」から感じ取ることができますね。
また、ここでは空模様以外にも「つぼみだった花が開いている」という情景も描写されています。ここからわたしが「新生活へ抱く希望」や、「今後の生活を明るく過ごせるであろうこと」が示唆(暗に指し示すことです)されていることがわかります。

読解例その3

彼女のにぎりしめた拳がかすかに震えていた。眉をひそめ、きっと私をにらみつけている。その瞬間、暖炉で炎が燃え上がった。

こちらは、風景や空ではなく、家の中にある「暖炉」の様子に「彼女」の心情が託されているのがわかるでしょうか。「眉をひそめてにらみつける」という表情、また、「暖炉の炎が燃え上がる」という描写から彼女の怒りの炎が燃え上がるようすが読み取れるでしょうか。

どうでしょう。小説の場合、「うれしい!」や「悲しい…」などの感情を表すことばが、あまりはっきり表現されないこともあるのです。そんなとき、わたしたちは、その場の情景・空気・描かれているものなどから、登場人物の気持ちを推しはかることができるのです。
丁寧にそれを読み取る作業が必要です。その場面の様子をよく読み、描かれている情景やものをしっかりおさえていきましょう!

小説にも、テーマがある。

論説文や説明文などの説明的な文章の中で筆者が伝えたいことを「要旨」といいます。説明的な文章の場合、テーマにしている内容を読者であるわたしたちにしっかり伝えたい!という意図があるものです。
しかし、それは説明文だけに限ったことではありません。小説の場合も、やっぱり作者が伝えたいことがあるのです。

小説のテーマのことを「主題」と呼びます。この小説で作者が伝えたいことは何だろう?それをしっかりおさえることが大切。
みなさんは小説を読むとき、「おもしろかった」または「つまらなかった」という感想を持つことでしょう。試験問題で問われているのはそのような感想ではありません。
だから、普通の読書のような読み方だと不十分。しっかり作者の意図をつかむことが大切なのです。

小説のテーマを読み取るにあたって、まずチェックしなければならない項目を挙げておきます。

・登場人物(特に、その中で中心となる主人公)

・ストーリーの中で起きた出来事

・出来事を経ての気持ちの変化

文章を読みながら以上の情報をしっかりつかみ、非常に簡単な要約の形ですが、以下のような形であらすじをまとめてみることをおすすめします。

以下の文章の登場人物・出来事・気持ちの変化をおさえよう!

ぼくはAくんのことが少し苦手であった。Aくんはあまり笑わず、とっつきにくい印象を与えるクラスメイトだ。そんな彼とぼくは、一緒にクラス委員を務めることになった。一緒に仕事をするようになり、話してみると彼はとても明るく、気遣いのできる人だということがわかった。同じ趣味を持っていることもわかり、ぼくは彼に親しみを覚えるようになった。

・登場人物…ぼく、Aくん
・出来事…2人が一緒にクラス委員を務めた。
・気持ちの変化…もともと苦手であったAくんに親しみを覚えるようになった。

非常に簡単な例を挙げましたが、どんなに長い文章であっても、このように情報を整理してみてください。登場人物、そこで起こった大きな出来事、それを経て変化した気持ち。小説はこの3点に着目してみましょう。

さて、まとめたあらすじから見える小説の「主題」は?ということも考えてみなければいけません。たとえば、先程の例文ではどうでしょう。Aくんとの交流により、はじめは苦手だった彼に親しみを覚えるようになった。「実際に交流を持つことにより、見えないものが見えてくる」そんな人間関係の在り方について伝えたい文章だったと考えることができますよね。

テストの点数が上がるポイントをまたひとつお教えしましょう。
「誰が/どこで/どうした」を意識することは、作文の得点力アップにも結びつきます!

最近の試験問題では、長い論述問題や作文問題の分量が増えています。どこからどう手をつけていいかわからない…という人は、そもそも文章の流れをしっかりつかむのが苦手な人です。
わからないまま書き始めるより、まずは様々な文章を読み、その構成を理解することを心がけてみましょう!

「随筆」って何?「論説文」との違いは?

論説文・説明文を「説明的文章」とまとめるのに対し、「小説文・随筆文」を「文学的文章」と呼ぶことがあります。
「小説」については先程説明しましたが、「随筆」とはなんでしょうか。

随筆とは…作者が自分の体験を通して、感じたことや考えたことを自由に文章にしたもの。

小説で描かれているものがフィクションであることが多いのに対し、随筆で書かれているのはノンフィクションの事実。事実について書かれているということについては論説文・説明文と似ているのかな?と感じるかもしれませんが、随筆文で書かれている内容はわたしたちにとってより身近であることが多いです。「こんなことがあった」「こんな人に会った」そんな体験(事実)を通して「こう思った」「こう感じた」という感想(意見)を述べていくもの。

あまりにも有名な随筆に、清少納言の「枕草子」がありますね。「春はあけぼの…」から始まる段を、国語の授業で習った方もたくさんいるでしょう。こんなものがいい、こんなものはみっともない。清少納言が宮仕えの中で見たもの、感じたこと、それらを通して彼女が考えたこと…それが生き生きと描かれています。

序論・本論・結論…という明確な筋立てがはっきりしている論説文に比べて、比較的自由な構成で、作者の筆のおもむくままに進んでいくもの。非常に「読みやすい!」と感じるのではないでしょうか。

例えば、こんな感じです。


先日、私は電車のなかでとある少女を見かけた。彼女は手に持った文庫本を非常にうれしそうに読んでいた。隣に座る男子高校生は、スマートフォンの中の画面を眺めている。どこか退屈そうな目をしている男子高校生に比べて、少女の目はとても輝いていた。少女がその本の中にどんな世界を見ているのか、私は気になった。彼女と対照的な目をした男子高校生の見ている世界とは、おそらく違う、夢にあふれた世界が見えているのだろうと感じた。

どうでしょう。みなさんに身近な小説のような、読みやすい文体で書かれているものが多いのです。比較的身近なできごとを、わかりやすく書いたものなのです。

随筆の正しい読み説き方を知ろう!

こちらも小説文と同じ。問題を解くために確認しなくてはならないことがあります。

・事実(メインで描いているできごと)

・意見(それに対する感想・考え)

「事実と意見」大切なのはこの2つです。
先ほど例に挙げた文章をベースに考えてみましょう。

事実…「電車で、読書をしている少女と、スマートフォンを見ている男子高校生を見た。」

意見…「スマートフォンを眺めている高校生に比べ、読書をする少女の目は輝いていた。
彼女の目には、本の中の夢にあふれた世界が見えているのだろうと思った。」

そこで起こった出来事、印象に残ったことを通じて、筆者が思ったことを深く考察してゆきます。これが随筆の大切なポイント。
日々の生活の中で印象的だった出来事をただ「おもしろかった」、「楽しかった」と書くだけでは、ただの日記になってしまいますよね。考察や感想が加わり、はじめて「随筆」としての形を成すのです。

「文学的文章」こそ、深い読解力が必要。


小説文・随筆文はまとめて「文学的文章」と呼ばれます。みなさんがよく読む本のジャンルではありますが、だからこそ、じっくり読んでほしいのです。
繰り返しになりますが、作者は登場人物に自分の思いや伝えたいことを託しています。随筆の場合は、自分が見た印象深いものから得た考察を、みなさんに伝えたいと思っています。彼らの行動や言動を、みなさんもよく観察してみてください。
そこで描かれた状況を想像し、じっくりと向き合い、考えてみることで、作品に対する深い理解を得ることができるのです。

普段の読書で欠けてしまいがちなのは、この「考察」の時間。ただ読書量を増やすだけでは、国語力アップにはつながりません。試験問題を解く時だけでなく、読書をする際も、作品を通して作者に向き合い「考察」してみてくださいね。

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国語科講師

桜沢うみ

高校は国際教養科に進学し、英語や外国文化に多く触れる。しかしクラスメイトたちの国語に対する意識の低さを目の当たりにし、改めて日本語や国語の大切さを実感したことから、大学は国文学科に進学、卒業。学生時代より学習指導のアルバイトに精を出す。卒業後は学習塾に勤務し、小学生から高校生、浪人生の国語や英語の指導にあたる。現在は小中学生をターゲットに、感覚で解きがちな国語を論理的にとらえるコツを指導中。

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