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愛読歴15年の私からおすすめのアガサ・クリスティ短編集5選

クリスティ文庫愛読歴15年/本のおすすめ人

本田めぐみ

子供の頃から読書好きで、常に文庫本を持ち歩いています。最近では海外の小説を読むことが多いです。特にミステリは好きですが、アガサ・クリスティ…

こんにちは。読書が好きでたまらない、自称「本のおすすめ人」、本田めぐみと申します。

ここ何年かは海外の作品をよく読んでいますが、その中でもアガサ・クリスティは別格の存在です。

非常に多作で、名探偵が活躍するミステリの他に、スパイ物や、謎解きとは関係ない一般の小説まで、いろんなジャンルの作品があります。しかし、残念なことに、傑作と呼ばれる作品が多いために、あまり紹介されない作品もまた多いんです。

クリスティ作品に魅了されている私としては、もっといろんな作品にスポットライトを当てて、多くの人にクリスティの魅力に気づいてほしいと願っています。

そこで今回は、ファン歴15年の私が、早川書房から出ているクリスティ文庫のうち、20冊を数える短編集の中から、おすすめの5冊をチョイスして、みなさまにご紹介したいと思います。

目次

  1. クリスティ作品における短編ミステリの魅力とは!?
  2. クリスティの生んだ個性豊かな探偵たちの5作品をご紹介
  3. 1.「クリスマス・プディングの冒険」
  4. 2.「火曜クラブ」
  5. 3.「おしどり探偵」
  6. 4.「パーカー・パイン登場」
  7. 5.「謎のクィン氏」
  8. 短編集でいろんなタイプの探偵を味わおう!

クリスティ作品における短編ミステリの魅力とは!?

なぜ短編集をおすすめするのか?

まず、いろんな方の「クリスティのおすすめ作品ベスト○○」を見てみますと、短編集はほとんどランクインしていません。

クリスティ作品には長編作品が多いですし、私を含めて、ファンはたっぷり読める方が好きだったりするからだと思います。

次に、クリスティの作品に限らず、今まで読んだことのない作家さんの本を手に取ってみようとしている人を想像してみました。

あくまで私の主観ですが、馴染みのない作家さんの本を選ぶとき、その作家さんの作品が短編中心だと分かっているか、短編の名手!と宣伝されていない限り、短編集を選ぶ人って少ないんじゃないかなと思います。

それには次のような理由があるのではないでしょうか。

理由1: 短く読めて面白い本はどれか、探しにくい。
理由2: 短編集は同じ作者の作品を集めただけで、統一感に欠ける気がして、手に取りにくい。

しかし一方で、ボリュームのある本には抵抗があって、短編を読む方が合っているという方もいらっしゃると思います。

それに、ミステリの短編には、短編であるがゆえの魅力があります。それは、純粋に謎解き要素を楽しめる、という点です。

短いお話であるために、登場人物が限定され、はっきりとした形で謎が出題され、仮説が並べられ、最後に鮮やかな謎解きが行われる。余分な部分をそぎ落としたスマートな形で謎が提供されるので、ミステリを謎解きの観点で楽しみたい方には、短編の方が面白く感じられるかもしれません。

蛇足となりますが、名探偵の代名詞、シャーロック・ホームズの作品は圧倒的に短編の方が多いのです。コナン・ドイル作のホームズ物のうち、長編作品はたったの4作しかありません。わざわざコナン・ドイル作と書いたのは、ホームズ物は後に別の作家によって新しい物語が書かれているからです。

逆に、私のように、ミステリにおいても人間ドラマを楽しみたい人には、その部分が割愛されているので、ちょっと物足りなく感じるかもしれません。

それでも、細かい描写がないというだけで、事件の関係者の心理についてもしっかり解き明かされているのが、ミステリの女王と呼ばれたクリスティの短編作品の素晴らしいところです。

短編作品はただ短い物語というものではなく、必要な要素がぎゅっと凝縮された物語なのです。

クリスティの生んだ個性豊かな探偵たちの5作品をご紹介

短編集は、雑誌などに載せられた作品を後にまとめて一冊の本にした、といういきさつの物が多いように思います。

その為、場合によってはいろんなジャンルのお話が一冊になっていたり、様々な探偵のお話で、それぞれのシリーズの本に収まりきらなかったものが集められていたりして、統一感に欠けていることがあります。

クリスティが好きだ―――!という読者は、そういった形であっても読みたいでしょうが、これからクリスティを読んでみようかな、という方には、テーマが統一されているものの方が楽しめると思います。

そこで、これからご紹介する短編集は、探偵別にお話が集められているものを選んでみました。短編集の性質上、中の作品すべてが同じ探偵の物語、というわけにはいかないものもありますが、そこはご容赦願います。

1.「クリスマス・プディングの冒険」

数あるポアロ物の短編のうち、名作がそろう!

クリスティが生み出した探偵の中で、最もシリーズ作品数の多い探偵が、エルキュール・ポアロです。

ベルギー人で、会話の中から矛盾点をみつけ、犯人を割り出すことを得意としています。立派に手入れされたひげや、身だしなみに気を使う小男といった、外見的な特徴もユニークですよね。

この「クリスマス・プディングの冒険」は、ポアロ物のお話の他に、マープル物が1作入っています。ポアロ物だけを集めた短編集も他にありますが、それでもポアロの短編集として、私はこれをおすすめしたいです。

特徴としては、一つ一つの物語が他の短編集に比べるとやや長めになっています。その分、短編でありながら、謎解きに絡めておまけ要素も楽しめます。

例えば、本のタイトルにもなっている「クリスマス・プディングの冒険」では、一昔前のイギリスのクリスマスの日のごちそうの様子が垣間見えますし、「二十四羽の黒つぐみ」では、ポアロの通うレストランでの食事風景、「スペイン櫃の秘密」では登場人物の複雑な胸の内が語られています。

クリスティ自身も"はじめに"の部分で、この本を料理のフルコースに例えています。ポアロの名作は数多くありますが、この本は選り抜きの作品が集まった短編集と言っていいと思います。みなさま、どうぞ、召し上がってください。

2.「火曜クラブ」

切れ味抜群!安楽椅子探偵、ミス・マープル

何を隠そう、ミス・マープルの初登場作品が、この短編集の第一話"火曜クラブ"です。1927年に雑誌に掲載された短編でした。

しかし、その後、1930年にマープル物の長編「牧師館の殺人」が刊行され、この短編集「火曜クラブ」が刊行されたのが1932年のため、初登場とみなされないことも多いようです。

先程、私はクリスティの傑作ランキングに短編集はほとんどランクインしていないと述べましたが、例外がこの「火曜クラブ」です。並み居る長編を押しのけてランクインしているのをちらほら見かけます。それほどの傑作です。

ミス・マープルの家に集まった5人、甥のレイモンド・ウエスト、女流画家のジョイス、元スコットランドヤードの警視総監、サー・ヘンリー・クリザリング、老牧師のペンダー博士、弁護士のペサリック氏と、家の主人のミス・マープル。この6人が順番に、世間で未解決とされている事件や、奇妙な体験を出題します。

残りの5人はそれらの問題に対する答えを考えて当てるという趣向の会を開きます。その会合の名が、火曜クラブ。ミス・マープルの推理方法は一風変わっていて、話を聞いているうちに、自分が知っている村の人物との類似点を見出し、そこから事件の解決へと導いていきます。

話を聞いただけで、事件を解決するスタイルの探偵を安楽椅子探偵と呼びますが、ミス・マープルはこのタイプの代表格です。

彼女の頭脳は切れ味抜群なのですが、自分の知る人物の例を引き合いに出すときの語りぶりが、私にはとても面白く感じられます。理詰めというよりは、人生経験からヒントを得て答えが分かってしまうところに、彼女の魅力があると思います。

ちなみに、この短編集と非常に似た趣向のミステリ短編集があります。SF作家として有名なアイザック・アシモフのミステリ作品で1972年に第一作が雑誌に発表され、後に本にまとめられた「黒後家蜘蛛の会」という短編集です。

ご興味のある方は、ぜひこちらものぞいてみてください。

3.「おしどり探偵」

クリスティ作品史上、最高の名コンビ!トミーとタペンス

トミーとタペンスの初登場は、クリスティ初期のスパイ物、「秘密機関」です。このとき、"二人の年齢を足しても40にならない"くらいの若者でした。

シリーズ作品数はそれほど多くはありませんが、クリスティとともに歳を重ねて、二人が老夫婦になってからの物語もあります。

「おしどり探偵」は、そんな二人が若夫婦の頃の物語で、シリーズ唯一の短編集です。

ある大物スパイを捕まえるため、国際探偵事務所を開設し、夫婦でそこの経営者に成りすまし、ターゲットが現れるまで探偵業をして待つ、という設定です。

スパイ物とミステリが両方味わえる作品です。この作品の見どころは、何と言ってもトミーとタペンスの掛け合いです。

慎重で思慮深い性格のトミーと、大胆で行動派のタペンス。元気いっぱいのタペンスは、時に無茶をすることがありますが、トミーは彼女のそんな性格をよく分かっていて、助けるためなら素早く行動します。

二人のやり取りはユーモアたっぷり。かりそめの探偵業を楽しむべく、有名なミステリ小説の探偵を引き合いに出したり、彼らの真似をしたりします。

私はこの二人が大好きで、ことにタペンスのバイタリティーにいつも感心します。おしどり夫婦が阿吽の呼吸で繰り広げるスパイ・ミステリを、ぜひ楽しんでいただきたいと思います。

4.「パーカー・パイン登場」

悩みを解決する心の治療士!パーカー・パイン

新聞の個人広告欄で見つけた奇妙な広告。

「あなたは幸せ?でないならパーカー・パイン氏にご相談を」

その文句に怪しむ気持ちを持ちながらも、悩みを打ち明けるために、依頼人がパーカー・パイン氏のもとを訪ねます。

パーカー・パイン氏は探偵ではありません。彼は35年間の官庁勤めを終えて、第二の人生として、不幸な人の悩みを解決する仕事を始めた人物です。官庁時代に統計を専門とする仕事をしており、その経験を生かして不幸を分類する、という一風変わった手法を用います。

実際は、パーカー・パイン氏自身は問題解決のために行動することはしません。若いスタッフたちに指示を出して、彼らが問題解決に一役買うのです。

彼の事務所を訪れる依頼者は、人生に退屈した退役軍人や、夫の浮気に悩む夫人、平凡なサラリーマンなどで、持ち込まれる問題は、事件ではなくその人の人生上の悩みです。

パーカー・パイン物は、この「パーカー・パイン登場」と、短編集「黄色いアイリス」にはいっている2作品だけですが、探偵ものとは違った面白味の感じられるシリーズです。なぜなら、このシリーズに出てくるお悩みは、探偵もので起こる事件よりも、私たちにとってずっと身近な問題だからです。

もしも私が困っていて誰かに相談したいと思ったら、ポアロではなくパーカー・パイン氏のところに行くでしょう。

ここでは詳しく取り上げませんでしたが、彼のところで働く魅力的な若いスタッフたちの活躍も見どころの一つです。気軽に楽しめる作品集だと思います。

5.「謎のクィン氏」

不思議な探偵クィン氏と、"人間ウォッチャー"サタースウェイト

クィン氏の作品は、いろんな意味で説明の難しい、不思議な作品です。

まず、探偵役が、ハーリ・クィンという謎の人物で、どうやら人間ではないらしいということです。と言っても、幽霊だとか、人外の生物だとかいうわけではなく、はっきりした正体が分からないけれど、別の世界からきて用が済むとそちらに帰って行ってしまうといった人物なのです。

また、探偵役をクィン氏と断定するのも実はちょっと微妙なんです。彼は、もう一人の主人公サタースウェイトに事件解決のヒントを与え、実際に行動するのはサタースウェイトの方だったりするからです。

サタースウェイトという人物はポアロの「三幕の殺人」にも登場しますが、人間ウォッチングが趣味で、常に自らは観客の立場にいます。そのため、スポットライトを浴びることはない人物なのですが、クィン氏が現れた時、彼は一転して主役に躍り出るのです。

そして、クィン氏が現れるのは決まって恋人たちが危機に直面しているとき。サタースウェイトが最も関心を寄せる恋愛ドラマの最中に登場するのです。

ミステリアスなクィン氏の描写は恋のキューピッドというイメージとはかけ離れていますが、実際にはキューピッドと言って差し支えないと思います。

クリスティの作品の中で最も不思議な探偵コンビと言えるでしょう。

短編集でいろんなタイプの探偵を味わおう!

クリスティの生み出した探偵はたくさんいますが、最も有名なのがエルキュール・ポアロ、次いで、ミス・マープルがよく知られた存在ではないでしょうか。彼らの作品はシリーズ化されているので、目にする機会も多いですし、また、名作もたくさんあります。

しかし、作品数は少なくともシリーズ化されている探偵たちはいますし、シリーズ化されていない探偵の中にも、とても魅力的なキャラクターがいます。素晴らしい物語もあります。

短編集は、いろんなタイプの探偵に出会えるチャンスを秘めています。作品数の多いクリスティの場合、まず、短編でお気に入りの探偵を探してみる、というのもアリではないでしょうか。いろんな探偵に目を向けていただけることを願っています。

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クリスティ文庫愛読歴15年/本のおすすめ人

本田めぐみ

子供の頃から読書好きで、常に文庫本を持ち歩いています。最近では海外の小説を読むことが多いです。特にミステリは好きですが、アガサ・クリスティの作品は別格です。クリスティの作品を網羅したクリスティ文庫は、発売当初から現在まで、折に触れて読み返しています。クリスティに限ったことではありませんが、面白い本、為になる本がたくさんあります。もっともっと本を読む人を増やしたいと願っており、月ごとにテーマを決めて、個人的におすすめしたい本を紹介するブログをしています。

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