つくね芋とは?-山芋との違いは?-
つくね芋は山芋(やまいも)の一品種です。つくね芋以外にも山芋にはいくつかの品種がありますので、つくね芋の解説に入る前に、まず山芋全般について解説します。
山芋はヤマノイモ科に属する芋の総称で、元来は野生の植物でした。里で栽培される芋(里芋)との比較から山芋という呼び名が登場したのでは?と推測します。
現在では、一部で野生の品種も流通していますが、大半は里芋と同様、畑で栽培されています。
代表的な品種-つくね芋=大和芋?-
自然薯(じねんじょ)、いちょう芋など、山芋にはいくつかの品種があります。ここでは代表的な品種について解説します。
自然薯
山などに自生している山芋。山菜の王様。長芋(後述)に似ているが、植物学上の種は異なる。日本原産で、最近では栽培も盛んに行われている。
長芋
長い棒のような山芋。比較的、水分が多い。
北日本での栽培が多く、青森県と北海道の2道県で、全国生産量の約8割を占める。(農林水産省HP 2018年12月より)
いちょう芋
いちょうの葉のような形をしている山芋。関東地方では「大和芋(やまといも]とも呼ばれる。関東地方、特に千葉県や埼玉県を中心に栽培されている。
つくね芋
比較的、丸い形の山芋。粘り気が強い。関西地方では「大和芋(やまといも)」とも呼ばれる。兵庫県や奈良県、三重県など関西地方を中心に栽培されている。
関東ではいちょう芋を大和芋と呼びますが、関西ではつくね芋を大和芋と呼んでおり、複雑です。
つくね芋の特徴
つくね芋の特徴は、その粘り気と形にあります。
つくね芋は山芋の中でもっとも強い粘り気を持つ品種で、丸い、握りこぶしのような形をしています。ジャガイモを一回り大きくしたような形状です。
そして、地域ブランド的な品種が多く存在します。三重県や奈良県の特産である「伊勢芋」、兵庫県の特産である「丹波芋」、石川県の「加賀丸いも」などが有名で、表皮の色など、それぞれに特徴があります。
つくね芋は粘り気があり肉質もよいことから、高級食材として日本料理や和菓子の材料などで広く利用されています。自前で栽培する価値は高いです。
つくね芋栽培の準備-種芋の入手とカット、芽出し-
つくね芋の栽培は、種芋を入手し、カットや芽出し作業を行い、そして種芋を植え付けることから始まります。
種芋の入手
つくね芋の種芋は、ジャガイモなどと違って、園芸店やホームセンターなどで容易に入手できるものではありません。ネットで取り寄せるのがよいでしょう。4月頃に種芋の販売が始まります。
ちょっと高価なのと、品薄気味なのが難点です。
下記はつくね芋の種芋が購入できる通販サイトの例です。
・サカタのタネ(株)
https://shop.sakataseed.co.jp/SearchCategoryTop?CID=5342&SEQ_OR=12
・タキイ種苗(株)
https://shop.takii.co.jp/CGI/shop/search/detail.cgi?item_code=NEA302
・(株)国華園
http://www.kokkaen-ec.jp/top/search/asp/list.asp?s_cate2=1007#toptitle
種芋のカットと乾燥
入手した種芋には大きいものも混じっています。そのまま使用しても問題はありませんが、もったいないので、大きいものは分割して、それぞれを種芋として使います。一片が50g~60g程度がよいです。
分割は、まず出っ張っている部分を削除し、残りを適当なサイズに切ります。絵は2分割した場合のものです。外皮の部分(カット面ではない)をなるべく残すようにカットします。
カットしたあとは、カット面を確実に乾燥させます。乾燥が不十分な種芋を植え付けると腐敗してしまう場合があります。
なお、種芋の準備や植え付けに関しては、JAつやまの営農情報を参考にさせていただきました。
芽出し
植え付け後の発芽を確実にするために、植え付け前に種芋に目を出させておくことを芽出しと呼びます。芽出しは、ジャガイモや里芋の栽培でも行われます。
入手した時点で既に芽が出ている種芋は、そのまま植付けてもかまいませんが、芽が出ていないものについては、すぐ植え付けることはせずに、芽出し作業を行ってから植え付けることになります。
芽出し作業では、発泡スチロール等の箱を用意し、土を入れて、中に種芋を埋めます。この状態で10℃~20℃の環境でしばらく保管します。箱の底には、水はけ用の穴を設けています。
種芋をカットした場合は、カット面が乾燥してから土に埋めるようにしてください。
そして時々、種芋を掘りだして芽の状況を観察します。環境にもよりますが、通常は1週間程度で芽が出て来ます。
つくね芋の栽培時期
つくね芋は、春に種芋を植え付けて秋から冬にかけて収穫します。栽培期間が長めで、半年以上を要します。
平均気温が13℃~14℃の頃が植え付けに適しています。
栽培時期の目安を以下に示しますが、種芋の袋に記載されている植え付け時期や収穫時期を守って栽培するようにしてください。
ここで、中間地は、関東、甲信越地方から近畿地方までの意です。暖地は、中国、四国、九州地方の意です。
つくね芋は高緯度の地域や北日本の地域では栽培が難しいです。これらの地域では、つくね芋よりも長芋の栽培をお勧めします。
なお栽培期間については、タキイ種苗(株)の情報を参考にさせていただきました。
畑の用意-畝は高めに-
石灰散布&耕耘-2週間前-
植え付けの2週間前をめどに苦土石灰を散布、深さ30cm程度までよく耕耘します。1㎡あたり100gが目安です。
石灰の効果等については、当サイトの「白菜の育て方」で解説しました。参考にしてください。
施肥&耕耘-1週間前-
植え付けの1週間前をめどに完熟堆肥と化成肥料を施し、深さ30cm程度までよく耕します。1㎡当たり、堆肥は1kg、化成肥料は100gが目安です。
化成肥料は、窒素分の少ない「いも・豆専用」を使用します。
Amazonより引用
肥料全般に関して、当サイトの「白菜の育て方」で解説しました。参考にしてください。
畝を立てる
水はけをよくするために、高さ20cm程度の蒲鉾型の畝を立てます。
畝幅は60cmとし、1条植えとします。株間30cmを確保するよう畝の長さを決めます。10株を栽培しようとすると、畝の長さは3.3mほどになります。
つくね芋の植え付け-カット面が乾燥後、適切な深さで-
植え付けはカット面が十分、乾燥してから、切り口を上向きにして行います。覆土厚(種芋の上に被せる土壌の厚さ)は3~5cmです。
植え付け後は乾燥を防ぐために、畝の中央、植え付けた部分を中心にわらを敷きます。敷きわらが入手出来ない場合は、植え付けの前に畝にポリマルチシート(マルチ)を敷いておくのがよいです。また天津すだれも代用になります。
つくね芋の発芽-芽かきを忘れずに-
気候にもよりますが、つくね芋は植え付け後3~4週間ほどで発芽します。一つの種芋から複数の芽が出ているようなら、元気な1本を残して、他はかき取ります。この作業を芽かきといいます。芽かきを怠ると、小さな芋が増えてしまい、大きく成長しないことがあります。
下の写真は植え付け後40日が経過したときのものです。既に30cmほどのつる状の茎になっています。
支柱立て-つくね芋はつる性植物-
つるが伸びだしてきた頃に、誘引するための支柱を立てます。畝を挟み込むように、2m間隔で立てます。高さは2m前後はほしいです。さらに、横方向にも、上部と中央部に計3本の支柱を用意します。強風で傾いたりしないよう、両端の支柱は3本立てにするのがよいです。また、横方向用の長い支柱が入手出来なければ、短いものを組み合わせて使用します。
そして片面(南側の面)に栽培用のネットを括り付けます。ネットははずれたりしないよう、縦の支柱、横の支柱にひもなどで確実に固定します。
つるが伸び始めたら、ネットに誘引します。
形状や長さ、太さが異なる、様々な支柱が販売されていますが、長さが2mほどのまっすぐな支柱を使います。また、蒲鉾型に曲げられた支柱も販売しています。2mほどの高さが確保できるなら、これでもかまいません。
Amazonより引用
栽培用ネットはキュウリの栽培などでよく使用されますが、それと同じものでかまいません。
Amazonより引用
下の写真は植え付け後、2か月が経過したものです。既につるがネットにからまり、上に伸びています。
また、つくね芋はつるが長く、葉もかなり大きく成長します。
地這い栽培(じばいさいばい)
支柱などを立てずに、地表につるを這わせて栽培するやり方を地這い栽培と言います。キュウリの栽培などで行うことがありますが、つくね芋でも可能です。
地這い栽培は支柱を用意する必要がなく、その分、楽ですが、畝の周囲に、つるが成長するための広めの場所を必要とします。そしてその場所には乾燥防止と雨の泥よけのために、敷きわらを施す必要があります。
追肥と土寄せ
梅雨明けをめどに追肥を施します。
一度、敷きわらをよけて化成肥料を株の周辺に施します。その後、肥料が隠れる程度に軽く土寄せを行い、再度、敷きわらを施します。化成肥料は1㎡当たり30g程度が目安です。
つくね芋の成長期-乾燥厳禁-
つくね芋は梅雨明けの頃から成長が早まり、実の肥大化も進みます。この時期の乾燥は厳禁です。さぼらずに水を与え、夏を乗り切ることが出来れば、秋には大きなつくね芋が収穫出来るでしょう。
水やりと敷きわら
敷きわらを持ち上げて乾燥状態を確かめ、土の表面が乾燥していたら、たっぷりと水を与えます。水は敷きわらの上からかけることで大丈夫です。また、乾燥防止のために、畝全体を覆うように敷きわらを追加します。
以降、夏の間は、土壌が乾燥していないか定期的に観察して、常に土壌が湿気で黒みを帯びている状態にしておきます。また、水やりは夕方に行います。
害虫対策
アブラムシやハダニが発生する場合があります。発見したらすみやかに退治することが重要です。
殺虫剤の散布は、晴天時の風がない日の午前中が最適です。また使うときは、マスクやゴム手袋を用意するなど、直接、体に触れないよう注意して行ってください。
スプレー式の殺虫剤が使いやすく有効です。殺虫剤には使い方が詳細に記載されていますので、それに従って施しましょう。
写真の殺虫剤は、原料が天然由来の成分で出来ており、安心して使えます。またさかさまでも噴霧できるので、葉の裏側などにも容易に吹き付けることが出来ます。
つくね芋の収穫-葉が枯れて、霜が降りたら-
つくね芋は、葉が茶色くなる10月中旬頃から収穫が出来ますが、より成熟させるためには、葉が完全に枯れてしまうまで収穫を待ったほうがよいです。下の写真は10月初めの様子を示しています。手前の株はだいぶ枯れてきましたが、奥のものはまだ枯れ始めたところです。収穫にはまだ早いです。
つくね芋は比較的、収穫期間が長いです。霜が降りてからでも十分間に合います。葉が茶色くなってからも、つくね芋は成長を続けるようです。
収穫の前に試し掘りをしてみるのもよいでしょう。1株から径が5cm以上の複数個のつくね芋が見つけられたら大成功です。
下の写真は10月中旬に収穫したものです。もう少し収穫を待ったほうがよかったかも知れません。
今回は、待ちきれずに10月中旬に全部の株を収穫してしまいました。それでも株によっては比較的大きな、かなりの量のつくね芋が収穫出来ました。
つくね芋のプランター栽培
1~2株程度なら、つくね芋はプランターによる栽培も可能です。
深さ30cm以上のプランターを使います。幅が60cm程度あれば、2株は植え付けることが出来ます。
Amazonより引用
プランターの底に水はけ用の鉢底石を敷き、専用の培養土でプランター内を満たします。培養土には必要な栄養分が含まれていますので、元肥は不要です。
以下で引用した培養土は、暖効性肥料を配合しており長期間にわたって肥料の効果を保ちます。そして軽い肥料ですので、プランターや鉢の移動も容易に行えます。
Amazonより引用
種芋の扱いや植え付け、その後の育て方は前述の露地栽培の場合と同じです。梅雨明けの頃に追肥として前述の化成肥料を与えます。
つくね芋はつる性の植物で葉も大きいので、支柱をうまく立てて、夏の間はグリーンカーテンとして利用するのもおもしろいでしょう。