ジャズ好きなんだ、とか、ジャズピアノを習っているんだ、と言うと、難しいよね、よくわからないんだけど、と言われます。
別に難しく考えなくても、まずは聴いてみたら?と言われて聴いてはみたけれど、やっぱりよくわからない。でも、出来ればわかるようになってみたい、という方もいらっしゃると思います。
私も最初は同じでした。全く何がなんだかわからなかったです。
何を聞けばいいのかがよくわからなかったです。要するに全体的にジャズという音楽の何が楽しいのか、どの辺が面白いのか、何が「イエーイ。」なのか。
そんな私でも、ジャズがわかるようになりました。
面白すぎて、一生の趣味を見つけた!と思いました。
ジャズを勉強し、一応、演奏に出るようになり、ジャズを教える先生になった私が、ジャズを聴いてみたいあなたに、聴き方のコツを伝授したいと思います。
難しいこと、理論的なところはいっさい省き、まずは大まかにジャズを「聴く」ことのポイントをお伝えし、わからない→わかった!と思っていただくことが目標です。
ジャズは難しい?
まずは、ジャズは難しいような気がする、よくわからないような気がする、というイメージがありますよね。
難しいと感じる、わからないと感じる、あなたがそう感じていることは、正解です。
初めての分野は誰でもわかりませんし、学校でもジャズの聴き方は習いませんね。
そして、しっかりと自分の感じ方をわかっている、という時点で、すばらしいと思います。
ジャズとの出会い
私は、偶然、友達がジャズボーカルを習っていて、たまたま発表会を聴きにいった事がきっかけでジャズを始めました。
初めて聴いたジャズは、「かっこいい!」そのもので、全然わからなそうだし、難しそうだけど、かっこいいから私もやってみたい!と思い立ち、その場にいたジャズピアニストに弟子にしてもらいました。
「とにかくたくさんジャズを聴いてね」と言われて聴いてみましたが、まず、どのCDを選んでいいかわからず、師匠や店員さんのおすすめを聞くことから始めました。
しかし、曲を聴いただけでは、何かがわかるようにはならなかったですね。
私はジャズピアノを習ったので、ピアノの立ち位置からのジャズを少しずつ教えてもらうことで、「ああ、そういうことだったのか」とわかる事が増え、わかってくると楽しさが増えてくる、という感じでどんどん面白くなっていきました。
ですので、ジャズは難しくないよ、とは言いません。
分かりやすいとも言いません。
実際にレッスンをすればするほど、新しい壁は山積み。
それこそ一生をかけて研究していける分野だと思っています。
だからこそ、ジャズに興味がある人が、難しいしわからないから、と聴かない選択をする前に、聴いてみてもらいたい。そのためのちょっとしたコツを伝授したいと思ったのです。
とにかく聴いてみよう!
聴いただけじゃわからないよ、と言っておいて、とにかく聴いてみよう!というのはとても矛盾していますが、まずはわからないと思っている状態で聴いてみましょう。
これから伝授するポイントを踏まえて聴きこむうちに、もう「わからない」という思いはどんどんなくなってしまいますので、とても貴重で大切な状態ですよ。
「全然わかんな~い。」という思いを楽しみながら聴きましょう。
課題曲を決めましょう
曲は、気になる曲でいいのですが、はじめのうちは名盤・名曲と言われているスダンダードジャズがいいですね。
そして、4ビートのものがおすすめです。
4ビートが何だかわからないよ、という方は、私がおすすめする課題曲で練習していきましょう。
私がおすすめする課題曲は、次の曲です。
ミュージシャン:オスカー・ピーターソン(ピアノ)
アルバム名:Night Train
曲:C jam blues
ジャズの名盤の中から、オスカー・ピーターソンの名演奏を選んでみました。
曲はyoutubeやネットで探してみて下さいね。
自分で探す、という事も、気に入る曲に出会える1つのチャンスですので。
それでは早速、わからない思いで心をいっぱいにして、1回聴いてみましょう。
聴き方のポイントを伝授!
1回聴いてみた感想はいかかでしたか?
何か気づくことはありましたか?
では早速、ポイントを伝授していきたいと思います!
ポイント1:テーマを覚えよう!
さて、最初のポイントは、まず、「テーマを覚えよう!」です。
ジャズの曲構成は、大体が以下のような感じで成り立っています。
イントロ→テーマ→各楽器のアドリブ→バース→テーマ→エンディング
始めのイントロは4から8小節。
テーマはメインメロディに当たるものです。
今回の課題曲、C jam bluesを例にすると、
イントロ:ベースとドラムのみのはじめから8小節
テーマ:(ソソ ソソ ソソ ソード×3回)×2回
ブルースなので12小節で1テーマになり、ブルースはテーマを2回繰り返すことが多いです。
(意味がわからない方はスルーして構いません。どんどん先にいきましょう。)
C jam bluesは何と言ってもテーマがソとドしかないので、ものすごくわかりやすいです。
そして、ピーターソンが本当にソとドしか弾かないので、さらにわかりやすいと思います。
そのテーマが終わると、アドリブに入ります。
この部分が、最初に難しく感じてよくわからない部分に当たります。
アドリブで何が演奏されていて、どうなっているかは、今回の講座では解説しませんので、横に置いておきましょう。
まずはこのテーマを覚えて下さい。
覚える時は、歌ってみるのが一番です。
そうすると、最初のテーマの終わりで、ドラムのフィルインがあったり、他の楽器の演奏がピタッと止まる所がありますよね。
ここからが重要です。
ジャズは、テーマを何回も繰り返し、最後にまたテーマを演奏して終わる音楽だ、とイメージしていただけるとわかりやすいと思います。
要するに、テーマを最初と最後に2回、アドリブでテーマと同じ小節の長さとコード進行を何回か繰り返し、テーマに戻るのです。
イントロ→テーマ→テーマ(アドリブ1)→テーマ(アドリブ2)→テーマ(アドリブ3)→テーマ→エンディング
アドリブは、このテーマの音をちょっとかっこよく演奏し、メロディを「フェイク」していく作業から始まります。
アドリブについては、理論的にはいろいろあるのですが、わかりやすく言うと、極端な話、テーマのフェイクが1回目のアドリブ、そのフェイクが2回目のアドリブ、そのまたフェイクが3回目のアドリブ、というように、フェイクを繰り返して何回も演奏するうちに、メインのメロディとは全く違うフェイクが出来上がります。
メロディの雰囲気を残しつつ、コード進行が同じ中で、どれだけかっこよくフェイクをするか、ということになります。
ですので、テーマを覚える事はまず大前提、という事になります。
ポイントをおさえて再トライ!
ポイント2:曲と一緒に歌ってみよう!
まずは、覚えたテーマをひたすら繰り返し5.6回、歌ってみましょう。
テーマを繰り返し歌う事が出来たら、課題曲をかけながら、歌ってみます。
1回分のテーマ:ソソ ソソ ソソ ソード×3回
C jam bluesでは、テーマ後のアドリブ2回に「ブレイク」と言って、ベースとドラムがピタッと止まる部分がありますね。
とてもかっこいい所です。
ベースとドラムが止まるところで1回目のテーマ(アドリブ)は終わりです。
4小節のブレイクの後、また2回目のテーマ(アドリブ)が始まります。
そして、3回目のアドリブ以降は、ブレイクがなく、テーマ(アドリブ)が続きます。
さあ、どうでしょうか?
慣れないうちは、課題曲のアドリブにつられてテーマを歌えなくなってきます。
そして何がなんだかよくわからない、という思いに再び出会います。
それで正解です。
ちゃんとジャズを聴けている、という事ですので、そのままでOKです。
最後のテーマと同じところから、自分がテーマの出だしを歌えるようになったら合格です。
合格した方は、次なるステップに進みましょう。
ポイント3:リズムに乗ってみよう!
リズムとは、4ビートであれば、1・2・3・4・1・2・3・4と繰り返される拍の事です。
今回の課題曲は速いテンポなのですが、4拍全部、リズムを取ってみましょう。
リズムはかかとで取ります。
細かく説明すると、こうなります。
1拍目:かかとを下げる→すぐ上げる
2拍目:かかとを下げる→すぐ上げる
3拍目:かかとを下げる→すぐ上げる
4拍目:かかとを下げる→すぐ上げる
これでジャズの乗りが完成です。
ベタにドテッとかかとを下げると、重たい曲になってしまうので、軽く地面につけたらすぐに離しましょう。
傍から見ても、ジャズを知っている人、が出来上がります。
リズムを取る時の注意点
よく、音楽を聴くときに、つま先でリズムを取る人がいますが、今回の場合は、テンポが速い上にアドリブが長いので、つま先でリズムを取ろうとすると、相当の筋力がない限り、足がツリますのでご注意ください。
もしかしたら貧乏ゆすりに見えてしまうかもしれませんが、かっこよくジャズを聴いているのですから、そんな事は気にせずにリズムを取ってみましょう。
さらに高度な技にチャレンジ!
かかとでリズムを取れるようになった方は、2拍目・4拍目で指パッチンをしてみましょう。
一気にジャズっぽくなりますよね。
腕は固めておくよりも、リズムに合わせて揺らした方が自然です。
ジャズを楽しむには、形も大事です。
体全体でジャズを感じていきましょう。
実際にジャズピアノを習ってみると
師匠に弟子入りしてみて感じた事は、ジャズは「そんなに難しい音楽ではない」という事でした。
思ったようにアドリブを取れるようになるには、それこそ何年もかかりますし、たくさんの勉強をしてもしつくせない程、奥の深い音楽でもありますが、全く出来ないわけでもないのです。
2曲位練習すればジャムセッションに参加出来るし、初めての人同士で、いきなり一緒に演奏する機会はなかなかないと思います。
理論を習い、しくみがわかると、なんでこんな音を弾いているのか、なんで共演者がリンクしていくのか、なんでこんなにかっこいい音色や和音を即興で弾けるのか、など興味がどんどん沸いてきて、キリがなくなります。
生演奏の魅力
そして、ジャズは何と言っても生演奏。生で聴く事に一番の魅力があります。
ジャズのライブハウスは、最初は入りにくいかもしれませんが、一度行ってみると2回目からは何とも思わなくなるくらい、面白いです。
本当に、ピラッと渡された譜面を、「せーの」で演奏してしまいます。
メロディとコードしか書かれていない、せいぜい見開きくらいの楽譜から、10分15分の演奏が沸き出てきます。
しっかりと練習されたビックバンドやオリジナル曲などもまた、楽しみの1つです。
生でミュージシャンの演奏を聴くと、楽器で話しかけられているような気持ちにさえなる、独特のジャンルがジャズの魅力でもあると思います。
今回のおさらい
いかがでしたか?
今、もう一度課題曲を聴いてみると、もうC jam bluesがわからない、難しいと感じる気持ちが少し薄くなっているのを感じませんか?
そうです。
C jam bluesに関しては、もうわからないわけでもなく、難しくもないわけです。
これから何回も聴き続けているうちに、さらにいろいろな事に気付き始めると思いますよ。
例えば、こんな事に気づくようになります。
- ピアノがキメのリズムを弾き始めたら、次のキメからはベースとドラムも同じリズムでキメを合わせてきてる
- ブレイクの所のピアノがかっこいい
- ドラムのリズムが実はいろんなパターンを叩いている
- ベースラインが上がったり下がったりしている
頭の中ではテーマを歌いながら、だんだんピアノ以外のパートが聴こえてくるようになります。
アドリブは、このテーマからそこまでの音が出てくるのか、とびっくりする程いろんな音が飛び出している事に気付きます。
そうなると、もうジャズの聴き方をわかっている、という事になるんです。
今回のポイント
ポイント1:テーマを覚える
ポイント2:音楽と一緒に歌いながら聴く
ポイント3:リズムを取る
※かかとでリズムを取りながら聴けると尚良し。
(出来る人は指パッチンを2拍目・4拍目にいれましょう。)
さらにジャズを楽しむために
ここまでなんとなくわかってきたな、と思ったら、一度お酒などを飲みつつ、ジャズを聴いてみて下さい。
お好きなお酒で構いませんが、バーボンやブランデーなどをロックで飲むとカッコイイでしょう。
1人で飲んでも良し、家族や恋人と飲んでも良し。
もうジャズは難しくはないですね。
よくわからないジャンルの音楽でもないですね。
ジャズとお酒があれば、ちょっとおしゃれで、大人の気分を味わえる夜の過ごし方が出来ますよ。
基本は全て同じですから、ぜひ、いろんな曲を聴いてみて下さいね。
ステキなジャズに出会えますように。